生命 自然の交流/共同のいとなみ

エクセルギーなLife&Housingラボ(NPO) 自然の循環性に生きる生活と住まい方/営みの提案交流ブログ

ミスト噴霧による冷却装置人工萱ぶき屋根

エクセルギーハウスの技術開発その6  2013.7.27

ミスト噴霧による冷却装置

人工萱ぶき屋根

室内冷房設置パネル

室外・農業用ハウス

 

  都市部において,萱ぶき屋根の機能を持った人工屋根ができないものか,この課題に向けてシリーズ4回で,お伝えする.研究・探究の結果として,最終回に【この人工萱ぶき屋根の基本部品となる【ミスト利用による冷熱採集菅】の発明を紹介する.期待してシリーズを読んでほしい.

        ただし,この発明部品は,完全工業品ではなく,発明特許申請には至らない技術であるのであしかわらず.だからこそ,誰でも何時でも使っていいのである.

 

【シリーズ第1回ミストの力は偉大である】

大阪大学大阪ガスエクセルギーデザイン共同研究講座』サイトに次のような記事が掲載されているので紹介する.

この共同研究は,あくまでも,大型プラント設計における探究であり,それに必要なエクセルギー計算となっている.私たちのやろうとしているエクセルギーハウスの建築運動では,住居エクセルギーを設計するにあたり,装置は,次のような素朴な・自然な・持続可能性のあるものである.

エクセルギーハウスの装置・住居構造のコンセプト; 三カ条

A自然の原理を巧みに使ったロウテクで

Bエクセルギー的な(自然の循環性のエネルギー・物質を使ったという意味

C  自然の無限過程こそ持続可能性と共生、および、美しさの根拠

 

以下の大阪大学の紹介は,こうしたものを開発するための,基礎の技術知識である.と考えて読んでほしい.

     なお,このサイト記事の基となる著作は次のものである.

監修久角喜徳,他『エクセルギーデザイン学の理解と応用』(大阪大学出版会2012.12

ミスト噴霧外気冷却

  最近,街中や駅の待合場所などにミスト噴霧外気冷却装置をよく見かけるようになりました。発生するミストの粒径は水の噴霧圧力やノズルの形状に影響され,噴霧圧力が高くなるほど粒径は細かくなります。ここでは,ミスト噴霧に関して、web等で公開されている情報をもとに概要を整理しました。

  『もやクールシステム』は、上水をポンプユニットで6MPaに昇圧し、ノズルで約20μMのミストを生成することができます。また、空気と混合できる二流体ノズル方式では、更に微細化が可能となるそうです。http://www.everloy-spray-nozzles.com/

 また,水道の蛇口にホースをつなぐだけで複数のノズルからミストを噴霧し、周囲外気を2~3℃下げることのできる装置が米国の企業により開発され、日本でも1セット数千円で販売されています。http://www.kokua-group.com/index.html

 

ミストの発生原理には、超音波加湿器方式、ノズルを通過する際に細かく砕き噴霧するノズル噴霧方式(粒径100200μM)、加熱された湿度100%温湿風の凝縮する自然に発生する霧と同じ原理の気化方式(粒径13μM)、高速回転のファンに水や温水をぶつけ微細化する水破砕方式(粒径~1μM)、圧電素子と加湿材を組み合わせた微細ミスト方式(粒径約5μM)その他、遠心式などがあります。

  

超音波加湿器は、家電商品として広く販売されています。その原理は、液体に超音波の振動エネルギーを与え、液面や液内部に周波数固有のキャピラリ波やキャビテーションを発生させることにより、液面に無数の毛細表面波を作り、液体の表面張力を減少させ、規則的分裂を行うものです。http://www.fdk.co.jp/cyber-j/pdf/BZ-PZJ002.pdf

さて、水噴霧外気冷却による省エネ技術としては、ガスタービンの空気圧縮機の入口や中間段に水を噴霧し、気化熱により圧縮空気の温度を下げるとともにガスタービンの出力アップを図ることがすでに行われています。

http://www.ihi.co.jp/powersystems/motor/lm6000.html

http://www.jsme.or.jp/ted/WS2/hatamiya.pdf

またエアコンの室外機の空気取り入れ口に水噴霧を行い夏場のピーク電力負荷の低減にも実施されています。http://www.ok-kizai.co.jp/sky-1.html

 

ミスト噴霧外気冷却のモデル

   プロセスシミュレータVMGSimには、飽和器(Saturation Operation)、空気加湿器(Psychometric Operation)、露点演算(Water Dew Point)の機能があり、またデシカントユニットを成分分離器(Component Splitter)で模擬することができます。計算は大気圧力下で外気の乾球温度、相対湿度、風量と噴霧水の流量と温度を与えることで以下の計算結果を得ることができます。

 

ミスト噴霧外気冷却の計算ページへ

※自分の設計でのエクセルギー計算を数値を打ち込むだけで自動計算してくれるので,これは便利である.しかし入力変数が,15個もあり,それらを実験で検証しないといけないが,面倒なときは,その数値の見込み値でも構わない.n

 

 Dry Air Mass流量 [kg/h] 

 外気中水分量 [kg/h] 

 飽和水蒸気圧力 [kPa] 

 露点 []  

 外気絶対湿度 [kg/kgDA] 

 飽和空気温度 [] 

 [冷気関連]  

 ミスト空気温度 [] 

 冷気中水分量 [kg/h] 

 乾き度  

 冷気温の飽和水蒸気圧力 [kPa] 

 ドレン量 [kg/h] 

 冷気の水蒸気分圧 [kPa] 

 相対湿度 []  

 冷気絶対湿度 [kg/kgDA] 

 外気温基準の冷熱発生量 [W] 

 冷気発生による創エクセルギー [] 

 

  外気基準の冷熱発生量とは水噴霧前と水噴霧後の質量流量×エンタルピーの差です。外気に水を噴霧してもその過程で冷却・加熱の操作を行わなければ、加湿状態の空気は等エンタルピーで変化するため、水を含めればエネルギーの増減は0となります。一方、エクセルギー評価では、外気温度を基準温度とするため、加湿された状態で温度が下がるため、エクセルギーは正の値となります。

  たとえば、Dry Air300Nm3/h、乾球温度35℃、相対湿度35%に、30℃の水を33.3cc/min1時間に2リットルのペットボトル1本分)噴霧することで、外気を12℃下げることができます。外気基準の冷熱発生量は約1kW、創エクセルギー27Wとなります。

  実際には、霧化した水滴がすべて蒸発できないため、外気温度の低下は理論値より小さくなりますが、このミストを含む冷気は、たとえば各種の空気冷却器において有効利用することができます。

是非体験してほしいこと

   上記の外気条件において、40℃の水を150cc/minsec9L/min)散布すると、冷気発生量はほぼ同じですが、23℃の冷気および冷水の発生創エクセルギーは、約110Wと大幅に増加します。この条件は、冷水塔の理想的な運転状態を模擬しています。

(シリーズ01終了)