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エクセルギーなLife&Housingラボ(NPO) 自然の循環性に生きる生活と住まい方/営みの提案交流ブログ

気化熱の威力,及び屋根に降り注ぐ雨,太陽光エネルギー量の計算【シリーズ5/10】

【参考資料】    

気化熱の威力,及び屋根に降り注ぐ雨,太陽光エネルギー量の計算

  (エクセルギーハウス技術開発研究所2014.9.6計算)

 

詳しくは,『我が家の屋根には年間どのくらいの太陽光と雨が降りそそいでいるのだろうか.そのエクセルギーはどのくらいなのか,計算する』を参照してほしい.以下にその要点を述べる;

    ※このレポートは,BS朝日の番組『緑のコトノハ』で,2014年10月上旬に放映された番組のために作成された資料の要点である.

 

雨,太陽光を受ける屋根の広さ

    以下は2階屋根の広さの概算;2階の建坪で,5×6間=30帖分;99の家屋での計算である.

 

一軒の屋根の降雨量

東京都年間降雨量(1981~2010年平均1529ミリ=1.5メートル1.5m×99㎡=148.5トン  

 

水の気化熱

《萱ぶき屋根の家》の仕組みと同じ原理で,水の気化熱を利用して,家屋の冷房をするエクセルギーハウスの場合,エアコンと能力を比較してみる.

1)気化熱量は,1cc(1gのこと)当り539.8cal(100℃の沸点での蒸発熱)であるが,気温35℃(夏場猛暑日)のときは,577cal となるので,水の蒸発熱1cc580cal=0.58kcal として計算する.

)消費電力500Wのエアコン稼動と同じ冷房能力は,どのくらいの水の気化熱と等しいのか

 計算してみる.

①消費電力と冷房能力の比率は,機器ごとに《成績係数COP》として表示されているので,それを一応COP=5としよう.そうすると,2.5kWの冷房能力となる.これをカロリーに直すと,1cal=4.18Jより,

1時間の冷房性能は,1kW=860kcalなので,2.5×860kcal=2150kcalとなる.

②しかし,それを常時稼動させているわけではなく,センサー管理によって稼動は1/2~1/4ぐらいという.

そうすると,エアコン稼動は12時間,その1/4として3時間分の稼動冷房量は,6450kcalとなる.これは,1)の換算式より,水の気化熱量としては,11Lの水量蒸発分となる.

  ③気化方式のエクセルギーハウスは,24時間稼動であるので,この冷却カロリーと等しい気化量は,1時間当りの気化水量は,0.46Lになる.ペットボトルの4分の1ぐらいを1時間で蒸発させる性能があればいい.

性能比較すると,エクセルギーハウスでは,1時間1平米当り460cc/99㎡≒4.6cc,1日では1平米当り,110gを気化させれば,24時間で,消費電力500Wのエアコンと同等の冷却効果となる.

 

大気熱・風水の気化に対する凄さ

  大気熱,及び自然風が,水の気化に対する性能はどれくらいなものかを計ってみる.それは,何のことはない.日常的にやっている家事である洗濯物で分かる.サイズ76cm×33cm=0.25㎡(この面積の裏表両方分としてみることになる.)のタオルで,水にぬらして脱水した重さは,210gで,それを乾燥させると130gとなった.その差80gが真夏日の日中,半日陰4時間ぐらいで,乾燥してしまうということになる.

 

《伝統的な萱ぶき屋根》では夏場の冷房として,雨を萱の髄まで染み込ませて,保水し,それを暑い晴天時に,蒸発させて気化熱で家屋内部に冷気を落とす仕組みを造っているが,その物理的な根拠がここにある

ナンと水は偉大なことか.戦前において既に,ブルーノ・タウトは『日本美の再発見』岩波新書1939年刊)において,《和の伝統的な建築》の素晴しさを絶賛したが,萱ぶきの屋根における雨水の働きを巧みに使う建築技術の素晴しい知恵に驚嘆したものであった.日本建築は,自然素材を生かして,自然の循環性との共生の建築として,その機能性を進化させた結晶である.タウトは,桂離宮の美しさを賞賛したが,その美しさの本質は,ここにあると言えないか.自然との共生・交流,その機能化,機能の究極形としての美である.

現代技術では,これを《波鋼板》を屋根梁に張り,その上側に,《気化促進絨毛シート》を張った屋根を造って行う.それがエクセルギーハウスの仕掛けである.

この気化能力は,直射日光が当たらない風通しのいい屋根上,あるいは,屋根裏での1平米当りの気化量では,どのくらいなのであろうか.24時間行うと,80g×6倍時間×(1平米はタオル面積の片面分の8倍)=3840gである.しかし,暗室であり,夜は気温も低くなろう.気化量は,タオルの半分ぐらいとして,さらに,タオルと異なって,水でぬらしたグラスウールを鋼板に敷いて気化させるのであり,性能が落ちて,1/4として,併せて,1日480gぐらいになろう.

大気熱・風もまた,大した威力である.上記の家屋気化で必要な冷熱量の,およそ4倍に当たる.面気化方式において,親水性・熱伝導性素材を生かして,熱採集の技術を高めれば,この機能レベルまでは,実現できるということである.

 

太陽光とエネルギー量

NEDO日射量データベース』「年平均全天日射量の平年値」より

年間では,1㎡当りで,12MJ/㎡・日=12MJ/㎡×365日

これをkWに変換すると               =12×365×0.2778kWh=1215kWh

 我が家では  1215kWh×99㎡=120329kWh=12万kWh   ・・・(H)

一般の住居屋根には,年間電力使用量のおよそ50倍の熱エネルギーが降り注いでいることになる.

原発と比較すると,1基最大出力100万kWの場合,

電力量は年間75%稼動6500時間で,650000万kWh・・・・(A)

A/H=650000÷12=650万所帯屋根(千代田区の面積相当)に降り注ぐ太陽光エネルギーとなる.

別のデータでは,『東京都環境局;ソーラ‐屋根台帳』の,地点別で「府中の年次発電量」を読み取ると;

4kW発電パネル(200wh性能を20枚)を載せると年間発電量3841kWh/

※上記発電量は,我が家に降り注ぐ太陽光へ津伝エネルギーの12%相当である.

 一般家庭の年間の使用電力量をおよそ2400kWhとすると,その1.6倍となる.

 

 

  以上の計算で自然の循環性に生きるエクセルギーハウスの根拠が分っていただけると思う.

 

雨,そして雪

   

    太陽光

    大気熱

    環境輻射熱

 

  これらの自然エネルギー・物質は大量に降り注ぎ,大量に家屋に当たっているのである.これらの自然エネルギー・物質の利用;交流と共生は,萱ぶき屋根の養蚕農家に建築の進化の典型が見られる.それを現代の技術に用いて,都市部でも実現できないのか,探究され,模索試行がなされている.エクセルギーハウスは,その一つの提案である.